飲食店の衛生管理はとても重要です。万が一にでも食中毒を起こしてしまうと、営業停止は免れません。経営状態もさることながら、お店の信用にも関わる重大な事になります。
衛生管理は日常の積み重ねです。食中毒が流行する時期だからと言って急に対策をとっても意味がありません。衛生管理の基本は手洗いであると言われています。今回は手洗いの効果と方法についてまとめました。
手を介して汚れは広がる
見た目が汚れていなくても、手にはたくさんの汚れが付着しています。何かを触れば、そこに付いた汚れは手に付着します。また、手自体も汗をかいたりするので汚れがあります。その中に、食中毒に繋がるような微生物が潜んでいることがあるのです。
微生物の不着した手で、厨房機器や調理器具を触ると、厨房内に汚染が広がります。仮にその手で食品を触ると、食品が汚染されてしまう危険性も大いにあるのです。こうやって、手を介して汚れは広がって行くのです。
全ての菌を取り除く必要があるのか?
手にはたくさんの菌が不着していますが、すべての菌が悪さをするわけではありません。人間の皮膚には常在菌と言って、外からの菌の侵入を防ぐ役目をしてくれる菌が存在します。それは食中毒の原因菌とは異なるため、常在菌まで落とす必要はありません。食品を取り扱う上で、問題になるのは、手の表面に付着する汚染菌です。表面に付着した菌は手洗いにより落とすことができるのです。
手洗いの効果
通常手洗いをしない手には、約1,000,000個の菌が存在すると言われています。もはや想像の域を超えていますが、とにかく恐ろしいほどの菌の量が付着しているのです。
それが流水15秒で手洗いをすると、約1%に減少して10,000個になるという実験結果があるのです。更にハンドソープを付けて10秒間もみ洗いをし、流水で15秒すすぐを2回繰り返すと、更に菌の量は0,0001%つまり約数個にまで減少させることができるというのです。手洗いが基本であると言われる理由はここにあり、非常にうなずける結果です。
参考:国立医薬品食品衛生研究所資料
出典元:森功次他:感染症学雑誌、80:496-500,2006 http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800050496.pdf
最近では、アルコールを用いての手指衛生も手洗いと同等の効果があると言われていますが、コスト面から考えてもまずは流水でしっかりと手洗いをする事をおススメします。
菌が増殖しやすい手とは
ご自身の手を見て下さい。手荒れや傷はありませんか?爪は短く切りそろえてありますか?手荒れや傷のある手は、菌が繁殖しやすい状態になります。特に傷口には食中毒の原因にもなる黄色ブドウ球菌が付着しやすいと言われています。日頃のケアは重要です。
爪と皮膚の間は、ブラシなどで洗浄しないと汚れが落ちにくい部分です。爪が伸びているとなおさら汚れは落としにくくなります。爪を短く切っておきましょう。
手洗いの効果を高めるためにも、手や爪のケアは重要です。
手洗いのタイミング
では、どのタイミングで手洗いをすればよいのでしょうか。多くの人は、作業前後とトイレ後、荷物の運搬後、後は調理中に油などで汚れた時でしょうか・・・
日本食品衛生協会の資料によると、手洗いのタイミングは以下お通りです
調理に入る前
外からの汚れを持ち込まないために必ず行いましょう
今後加熱しない食品に触れる前
加熱処理しないため、食材が菌の温床にならないようにしましょう
盛り付けの前
盛り付け後はお客様の口にはいります。きれな手で盛り付けましょう
手袋着用前
手袋の中は湿った状態になり、菌が繁殖しやすくなります。きれいな手で着用しましょう
トイレの後
トイレは複数で利用するため、下痢があったかどうかなど細かい事が分かりません。トイレは一番汚染されている場所です。基本に忠実に手洗いをしましょう
微生物の汚染源になると思われる食材に触れた後
肉や魚、土付きの野菜にっも最近が付着しているこがあります。調理する食材が変わる時は手洗いが必要です
廃棄処理のあと
廃棄物の汚染を厨房内に広げないためです
手洗いの方法
厚生労働省が「ノロウイルス等の食中毒防止のための適切な手洗い」という動画を配信しています。約10分の動画です。参考にしてください。
洗い残しをしやすい部位
指先と爪周囲、親指の付け根や手首は洗い残しの多い部位になります。特に意識して洗いましょう。時には、お互いにチェックしあうのも有効です。
まとめ
今回は手洗いの効果と重要性について説明しました。食品を取り扱う上では、目に見えない微生物までも見えるものとして対策をとる必要があります。手が、いかに汚染を広げるのかをしっかりと意識して、日々の店舗運営にあたってください。